Mobvoiさんから、TicWatch Pro 3 Ultraをレビュー用に提供していただきました。Mobvoiのフラッグシップスマートウォッチで、Wear OSを搭載することにより圧倒的な多機能を実現しています。
目次(見たいところからチェック!)
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TicWatch Pro 3 Ultraのスペック
製品名 | TicWatch Pro 3 Ultra |
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カラー | シャドウブラック |
SoC | Qualcomm Snapdragon Wear 4100 Platform + Mobvoi Dual Processor System |
メモリ | 1GB |
ストレージ(ROM) | 8GB |
サイズ | 約47 × 48 × 12.3mm |
重量 | 約41g |
素材 | ボディ:ステンレス+高強度ナイロン バンド:フッ素ゴム ディスプレイ:Corning Gorilla Anti-fingerprint Cover Glass |
バンド幅 | 約22mm |
ディスプレイ | 1.4インチ AMOLED(454×454、326ppi) + FSTN液晶 |
防水 | IP68, プール水泳 |
センサー | PPG心拍数センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、気圧センサー、装着センサー |
位置測位システム(GNSS) | GPS、Beidou、GLONASS、Galileo、QZSS(みちびき) |
無線 | Bluetooth 5.0+Wi-Fi 802.11 b/g/n |
バッテリー | 577 mAh 充電時間:最大2時間 |
より詳細なスペックは公式サイトをご覧ください。
パッケージ、内容品など
パッケージです。黒っぽい色づかいになっています。
内容品一覧です。TicWatch Pro 3 Ultra本体、マグネット式充電器、クイックスタートガイド、安全の手引きなどが入っています。
本体、外観など
本体です。カラーはシャドウブラックのみのラインナップです。高性能なSoCを搭載するためか、割と厚みがあります。
本体右側面にボタンが2つついていて、左側面にはマイクやスピーカーの穴があります。
文字盤の外周にあるスリットがカッコいいですね。
ボタン(クラウン)にはスリットが入っていて、スクロール操作ができそうですが、回しても何も起きません。
裏面にはLEDとPDセンサー、充電器と接続するためのピンがあります。
バンドはフッ素ゴム製で、デザインはベーシックな感じです。
ディスプレイ
TicWatch Pro 3 Ultraの大きな特徴の1つがディスプレイです。なんと、2種類のディスプレイを搭載。スマートウォッチによく使われるAMOLEDディスプレイの上に、常時表示専用の液晶ディスプレイが重ねて搭載されています。
AMOLEDディスプレイ側に文字を表示している場合は液晶ディスプレイは消灯しているので、見えづらいと感じることも少ないです。状況によってディスプレイを使い分けることで、消費電力の低減に繋げています。
液晶ディスプレイは設定しないとバックライトが点灯しないので、室内ではかなり見づらいです。左の画像は明るい室内で、見えやすい角度で撮影しているのでまぁまぁ見えていますが、光が反射するような角度にする必要があります。
設定した際にバックライトとして使われるのは、後ろ側にあるAMOLEDディスプレイです。せっかく省電力化のためにAMOLEDとは別に液晶ディスプレイを搭載しているのに、室内での見やすさを優先するとAMOLEDディスプレイをオンにしなければならず、悩ましいところです。私は割と明るい室内にいることが多いですが、スマホも持っている事が多く、時刻の確認はそちらでできるので、バックライトはオフにしています。
画面配置、操作
操作は基本的にタッチで行います。
画面レイアウト
ウォッチフェイスが表示されている状態でボタンを押すと、アプリ一覧画面になります。元々インストールされているアプリの他に、Playストアからインストールしたアプリも表示されます。
ウォッチフェイスを右から左にスワイプすると、タイルが表示されます。Wear OSのスマホアプリから追加や順番の変更ができますが、画面が循環しないのでちょっと操作しづらいことがあります。
ウォッチフェイスを左から右にスワイプすると、日時や天気、Googleアシスタントの起動ボタンなどが表示されます。下にスクロールすると名言も日替わりで出ます。
ウォッチフェイスで上から下にスワイプすると、コントロールセンターの画面になります。
音楽を再生している場合は、コントロールセンターから再生/停止などが制御できます。
通知
ウォッチフェイスを下から上にスワイプすると、通知を確認できます。アプリアイコンはもちろん、一部絵文字にも対応しています。
通知は横に全角11文字程度表示でき、フォントは漢字を含め非常に自然です。
通知は確認にとどまらず、Twitterならリツイートやいいね、返信、SMSなら既読にするなどの簡単な操作が可能です。
2つの管理アプリ
- Wear OS by Google スマートウォッチ
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制作: Google LLC価格: 無料
- Mobvoi (formerly TicWatch)
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制作: Mobvoi Information Technology Company Limited.価格: 無料
TicWatch Pro 3 UltraはWear OSを搭載しています。そのため、ペアリングなどは『Wear OS by Google スマートウォッチ』をスマホ側にインストールして行い、それ以外、例えば睡眠分析のデータなどはTicWatch用のMobvoiアプリで行います。
ペアリングなど
ペアリングはWear OS by Google スマートウォッチアプリから行います。画面の指示に従えば完了します。
利用したい機能に合わせて、適宜権限を許可していきます。
私の場合、Googleアカウントをコピーする際に何度挑戦してもエラーが出たのですが、スキップして進めたらなぜかコピーできていました。
Movboiアプリ
Movboiアプリでは、Movboiアカウント(もしくはGoogleアカウント)でログインし、アプリ内の設定で機種(今回ならTicWatch Pro 3 Ultra)を選ぶなどします。
アプリのトップ画面です。
睡眠トラッキング
睡眠トラッキングです。睡眠効率という形でスコア化され、心拍数やSpO2も分かります。画像3枚目のように仮眠(昼寝)も検出されますが、仮眠ではない(起きていた)のに寝ていたと判定されたこともありました。
アクティビティ計測
数kmサイクリングしたときの記録です。TicWatch Pro 3 Ultra GPSはモデル名にもある通り、単独での位置情報測位が可能です。ただ、結果のマップを拡大するとか、個人情報を保護しつつシェアをするために軌跡だけを表示する、みたいな機能は無いらしく、ちょっと機能不足な感じがしました。
バッテリー持ち
バッテリーは、Smart Modeで最大72時間持続すると説明されています。なおその詳細な条件は明かされていません。
環境により異なりますが、私が使った設定(睡眠モニタリング/睡眠時呼吸の質モニタリングON、アクティブ心拍数モニタリングON、自動ストレスモニタリング、血中酸素自動モニタリングON、腕上げで画面点灯(10秒)、画面輝度自動調整、1日一度2分程度の通話、)では、大体1日半くらい持続しました。持っても2日が限度という感じで、72時間はまず持たないです。Wear OSはAndroidを元に開発されていて、スマートウォッチ専用OSに比べるとできることも多いですが、消費電力もその分大きくなります。
使ってみた感想
現状のWear OSとバッテリー持ち
バッテリー持ちは、Wear OSを搭載しているため悪いと言わざる得ません。2週間は無理でも、5日くらい持ってくれればいいのですが…
省電力モードなどにすれば持続時間は伸びますが、Wear OSの最大のメリットである機能性を捨てることになりますし、そうするくらいなら初めからよりバッテリーが長持ちする別の機種を買えばいいじゃん、となってしまうのが難しいところ。
バッテリーは持ちませんが、できる機能はApple Watch並に多いです。サードパーティのクライアントアプリをを利用すれば、Twitterの投稿/閲覧なども行えます。ただ、そんなに小さな画面でTwitterを閲覧するか?というと普通はそんなシチュエーションはないので、うーん…となってしまいます。
これはWear OSに限ったことではありませんが、スピーカーとマイクを搭載しているので電話を単体で受けられるのは便利でした。また、こちらから発信するのもスマートウォッチで完結するのでスマホを取り出す必要がなく、小さい点ですが便利さを実感できました。なお、単体でのセルラー通信には対応していないので、スマートフォンと接続していることが条件となります。
ちなみに、Androidを元にしているOSだからなのか、アプリの権限周りの仕様がスマホと似ています。Wear OSでは、スマートウォッチ側で権限が許可されていないとデータの取得ができません。私は最初これに気づかず、記録されてないな?と思ったらスマートウォッチ側でも権限を許可する必要があって驚きました。
Apple WatchやWear OSで最も便利な機能の1つが非接触型決済の機能だと思うのですが、Wear OSでのGoogle Pay(Google Wallet)の機能は、日本では(記事執筆時点で)使用不可能となっています。TicWatch Pro 3 Ultraはハードウェア的には対応していて(FeliCaは非対応)、アプリのインストールもできますが、日本からは使えないのです(一応非公式なやり方で使う方法はありますが、それは「使える」とは言えません)。
これ、Apple Watchに対する結構大きなディスアドバンテージだと思うのですが、いつになったら開放されるのかは不明です。
Pixel Watchリリースのタイミングで、他社製Wear OS搭載スマートウォッチでも使えるようになるのではないか、という推測もありますが、リリース前で未だ推測の域を出ません。非接触型決済が使えるようになれば、かなり大きなメリットになるはずですし、(これはどちらかというとGoogleの問題ですが)ぜひ日本でも使えるようにして欲しいところです。
Wear OSで良かった点として、Playストアからもウォッチフェイスが選べるというところがあります。私はPlayストアでかなり好みのウォッチフェイスを見つけたので、購入しました。ただ、Movboi製のウォッチフェイスであっても、有料のウォッチフェイスもあり、公式なら無料のウォッチフェイスに他製品で慣れた身としては、少し不満も覚えましたが…。
また、Wear OSは画面のなめらかさが全然違います。今でこそリフレッシュレートが60Hzのスマートウォッチも出てきつつありますが、TicWatch Pro 3 Ultraのなめらかさを体感すると戻れないという方もいそうです。
また、Google Mapアプリを入れれば、スマホで設定したルート案内をスマートウォッチで引き継ぎ、地図も表示できたりと、スマホとの連携はさすがの一言です。
Wear OSには確かに課題もありますが、結局は独自OSでバッテリー持ちや統合されたユーザー体験を取るか、Wear OSでそれを超える拡張性を手に入れるか、という話で、どちらを重視するかで最適な製品も変わってきます。
ヘルスケアガジェットととして
スマートウォッチは、今やヘルスケアの道具としても利用されています。本製品ももちろんアクティビティ計測やSpO2計測、心拍数の計測などに対応しているのですが、特にヘルスケア面にフォーカスしてみると、「機能としてはあるけど、詳しくはないな」と感じました。
例えば、24時間心拍数を計測する機能は、測定頻度などを調節することができませんし、心拍数のグラフをタップしても「何時の平均心拍数」みたいな情報は分かりません。平均と最低/最大は数値で表示されるものの、割と大雑把に表現されています。
一番残念だったのは、アクティビティの計測結果のプロットです。Google Mapに重ねてルートが表示されるのですが、(先述の通り)地図は表示せず軌跡だけ表示する、みたいなことができません。これだと特定につながってしまうので(他人への共有を想定していないのかもしれませんが)、地図のマスキングができたらよかったと感じます。
ここまでヘルスケアガジェットとして褒めていませんが、もちろん良い点もあります。それは、試験的機能として用意されている心臓の健康モニタリング機能です。IHB(不規則脈波)/AFiB(心房細動)を検出することで、心臓のリスクを知ることができ、医療機器のような正確性はありませんが興味深いです。
その他
TicWatch Pro 3 Ultraには、一応日本語も含まれています。しかし、理解に時間がかかるレベルで不自然なことが多いと感じました。Wear OSの機能の部分は大丈夫なのですが、Mobvoi製作のアプリになると急に不自然になってしまいます。ここは、技術的・法的な障壁は無いはずですし、もう少しローカライズを頑張ってほしいですね。
製品と直接は関係しませんが、バッテリー持ちが悪い原因の1つとして、TicWatch Pro 3 Ultraに搭載されているSnapdragon Wear 4100の製造プロセスルールが古いことも考えられます。一般的に、プロセスルールが微細化すると消費電力が低下する傾向にありますが、Snapdragon Wear 4100で採用されたプロセスルールは12nmで、当時(2020年)としては少し古いものでした(12nmは第2世代Ryzen(2018年夏発売)などで採用)。PC向けマイクロプロセッサーのような、販売数も性質も異なる製品とプロセスルールだけで比べるのは少し酷ですが、いささかばかり古さを感じさせる仕様でした。
しかし、7月下旬に発表された後継モデルのSnapdragon W5/W5+ Gen 1ではプロセスルールに4nmが採用されていて、これはSnapdragon 8+ Gen 1と同一です。TicWatchもこの新SoCを搭載した新機種の投入を予告しており、仮に日本にも投入されるのであれば、そちらを待つのも選択肢の1つかもしれません。なお、海外で発表されても日本投入までにはタイムラグがあることも多いほか、そもそも投入されるかも確定していない点には注意する必要があります。
まとめ
TicWatch Pro 3 UltraはWear OSにより圧倒的な拡張性を実現し、スマートフォンのような体験を腕にもたらしてくれます。その反面消費電力は大きいですが、ここは多機能とトレードオフの関係です。多機能な分少し値が張りますが、MILスペックの耐久性など装備も相応にあります。
そもそもSnapdragon Wear 4100/4100+を搭載し、Wear OSを採用したスマートウォッチは日本だと種類が限られていますし、バッテリー持ちよりもWear OSの多機能さ・拡張性を重視する方の有力候補になってくれることでしょう。
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