Leica M9-P レビュー:唯一無二のクラシカルなデジタルカメラ

Leica M9-Pをご存知ですか?

Leica M9-Pは2011年に発売されたデジタルレンジファインダーカメラで、2009年に発売されたLeica M9のアップグレードモデルです。主な変更点として、ライカの赤バッチが省かれ、軍艦部に筆記体の刻印、背面液晶がサファイアガラスにアップグレードされています。

Leica M9-Pは年々高騰し、後継機種にあたるLeica M(Typ240)やM10の方が安く買えてしまう状況です。スペックや利便性を追求するのであれば、これらの機種を購入するのが得策でしょう。それでもなぜ、Leica M9-Pを惹かれてしまうのか?

そんな蠱惑的なカメラをレビューします。

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デジタルなのに、クラシカル

Leica M9-Pはデジタルカメラなのにも関わらず、フィルムカメラのようにクラシカルな外見をしています。

Leicaの赤いロゴ(通称:赤バッチ)が省略され、細いネジへと置き換わっています。採光窓もあり、M型ライカの原点にあたるLeica M3を彷彿とさせるクラシカルなデザインです。

Leica M9-Pの後継機にあたるLeica Mシリーズ以降は、採光窓と細いネジが廃止され、より現代的なデザインに変更されました。つまり、Leica M9-PはLeica M3より続く伝統を遵守した、最後のデジタルM型ライカなのです。これだけでもう、熱心なライカファンの心をグッと掴みます。まさに「唯一無二」の存在です。

軍艦部にある”Leica LEICA CAMERA GERMANY”のエングレーブもクラシカルで象徴的。「かっこいい」の一言に尽きます。これが往年の名機、Leica M3と同じ”Leica DBP ERNST LEITZ GMBH. WETZLAR GERMANY”だったら完璧すぎて毎晩お酒が進んでしまうのですが、このあたりは「大人の事情」が絡んでくるので仕方ないです。(大人の事情が気になる人はライカの歴史を調べてください。)

背面の液晶や操作系からも時代を感じ、現代の機器に慣れていると使いにくいでしょう。

バッテリーは裏蓋を開けて交換します。スライド式ではなく、裏蓋そのものを開けて交換するスタイルです。これはフィルム時代のM型ライカを踏襲。かつては裏蓋を開けてフィルムを装填していました。

クセになる、惹き込まれるような写り

Leica M9-PにはKodak製のフルサイズCCDセンサーが搭載されています。M型ライカのなかでフルサイズのCCDセンサーを搭載したのはM9シリーズとモノクロ専用モデルのM Monochomeだけです。

Kodak製のフルサイズCCDセンサーだから凄いというわけではないと思うのですが、熱心なM9ファンはKodak製CCDセンサーがいいんだ!と熱弁します。カルト的な人気を誇るわけです。何を隠そう、私もドップリとハマってしまいました(笑)。以下は作例です。

NOKTON Classic 35/1.4ⅱ

Summicron-M 50/2 1st Collapsible

P.Angenieux S1 50/1.8 Coated

P.Angenieux X1 35/3.5

M-ROKKOR 28/2.8

M-ROKKOR 28/2.8

M-ROKKOR 40/2

Summicron-M 50/2 1st Collapsible

独特な写りとトレードオフ、現代のスペック水準は到底満たしていない

Leica M9-Pは独特な写りをするカメラですが、最大の欠点として現代のカメラスペックは到底満たしていません。

ISO感度は800前後が許容値

ISO感度は最大2500までしか対応しません。ISO2500というのは最大感度であって、実用は到底不可能です。最近のAIノイズ除去を使えば奮闘できるレベルで、撮って出しがメインの人にとっては、もはや実用は不可能。個人差はあれど、ISO800前後が許容範囲内でしょう。

ガラケー並みの背面液晶

背面液晶はガラケー並み。どこにピントが合っているのかもイマイチわかりません。背面液晶で写真を確認して「微妙だな……」と思っても、PCやタブレットで確認すると「すげえ!」と感動してしまうことも。基本的には簡易チェック用だと思います。

バッテリー持ちは微妙

バッテリー持ちは微妙です。筆者は中古購入したバッテリーを使用していますが、新品のバッテリーでも予備のバッテリーを携行していないと1日はキツいと言っている方もいました。筆者も1日ガッツリ撮影する時は最低でも予備のバッテリーが2本ないと厳しいと感じます。

逆を言えば、適当に50枚くらい日常写真を撮る程度であれば問題ないでしょう。筆者は予備でバッテリーを3つ携行するようにしています。

懐かしさすら感じるUI

UIも一昔前の機械を彷彿とさせます。ISO800が実用範囲内だったり、ライブビューに非対応な点、ガラケー並の背面液晶に比べると、些細な点ではありますが……。このあたりは「慣れ」だとは思います。

分離シャッターでステルス性が高まる

Leica M9系には「分離シャッター」と呼ばれる機能が搭載されています。これはシャッターボタンを押すとシャッターが切れ、離すとシャッターチャージが始まる仕組み。

これによって、撮影時にシャッターチャージの音が鳴らなくなり、さり気なくスナップを撮れます。

Leica M9-Pは何が素晴らしいのか?

Leica M9-Pについて長々と述べてきました。不便なカメラではありますが、それを凌駕するフィルムとデジタルの中間に位置するような写りと、レンジファインダーが堪りません。いわば、フィルムカメラをそのままデジタルにした……そんな印象です。

もう発売から10年以上が経ち、修理サポートも徐々に受けられなくなってきています。それでもなお、Leica M9-Pには筆者をはじめとした多くのファンが存在するのは、蠱惑的な魅力があるからでしょう。

なぜLeica M9-Pに惹かれるのか……?それはブランドでも、宗教でもありません。では、優れたレンズや画作りの影響かと言われると、そうとも限りません。筆者はライカのレンズがあまり好きではなく、P.AngenieuxやSchneider Kreuznachなどノンライツレンズを好んで使用しています。

そうなると、M型ライカの核になる部分、レンジファインダーです。そこに先述したポジフィルムを彷彿とさせるような画、ISO800前後が許容値のフルサイズCCDセンサー……これらの塩梅加減が絶妙だからこそ、酔狂してしまうのでしょう。Leica M9-Pの本質はアナログなデジタルレンジファインダーカメラだと思います。

……まあ、おすすめはできません。筆者はハマったカメラでしたが、とても万人に刺さるとは言い難いです。60万〜70万の中古相場で、内容によっては修理もできず、現代のカメラに劣るスペック、それでも本文中で述べた点に魅力を感じるのならば購入を検討するといいでしょう。

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CloNis

2002年生まれ、自分の好奇心を満たすために行動してます!

行動(選択)基準はよくもわるくも「おもしろいか、おもしろくないか」になりがち。スマホはGalaxy Z Fold 5、最近はAngenieuxのレンズにハマってます。

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