Finalの旧いイヤホン「Heaven VIII」は空間表現を楽しむ至高の1本
final audio design(現Final)の過去製品「Heaven VIII」をご存知でしょうか。2015年発売のシングルBAイヤホンで、かつて同社が開発・販売していたHeavenシリーズの最終系です。Heavenシリーズは終売後も熱狂的なファンが存在し、一部のモデルはその希少性からオンライン出品されると数分で売り切れるほどの人気っぷり。もちろんHeaven VIIIも例外ではなく、1年に3~5本の出品を確認できれば御の字かつ大体が24時間以内に完売してしまいます。
この度、幸運なことに数年ぶりに入手したので、レビューではなく「あえて」紹介していきます。
- 本記事は広告およびアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。
黄金に光る筐体
Heaven VIIIは神々しい金色の筐体で、いわゆる金メッキのような光沢仕上げになっています。金色の時点で、だいぶ攻めているのですが、筐体デザインも凹凸がタイル模様に配列されており、一般的なプラスチックや樹脂製のシェルとは一線を画したデザインです。
まるでジュエルのような筐体デザインは、金属を含めた特殊な素材を金型に流し込み焼結して製作されています。あえて金属切削ではなく高温で焼結させる設計を採用したのには理由があり、筐体の表面にある凹凸は共振を分散とするための設計で、切削では実現不可能な筐体の整形を実現するためです。もはや、芸術品と言っても過言ではないでしょう。後述しますが、Heaven VIIIは外出時に使うイヤホンではありません。金色だろうと気にせず使えます。
ケーブルのカラーは深みのある茶色。金色の筐体に対して落ち着きのあるケーブルカラーは大人な渋さを感じさせます。ケーブルの形状は、いわゆる「きしめん型」と呼ばれる「平打ち麵」のようで、しなやかさはありません。取り回しはお世辞にも良いとは言えず、タッチノイズも発生しやすくリケーブルもできないため、室内利用に留めておくべきでしょう。
金色の筐体に着目しがちですが、全体を通してみると統一感があります。むしろ嗜好品として良いと思わせる、そんなデザインです。
兄弟機のHeaven VIIとBAM機構について
Heaven VIIIには兄弟機のHeaven VIIが存在します。両機の違いはBAM機構の有無、カラーリングの差異で、筐体デザインやドライバは変わりません。BAM機構はHeaven VIIIにのみ採用されており、ハウジング内における空気の流れを最適化し低音と3次元的な音場を実現するとしています。また、カラーリングはHeaven VIIIが金メッキ塗装なのに対してHeaven VIIはステンレス筐体の鏡面仕上げです。
筆者はHeaven VIII/VIIの両方を所有していた時期もあり、またHeaven VIIは通算5本所有していました。一見すると、両機に大きな音の差異はないように読み解けるかもしれませんが、Heaven VIIよりもVIIIの方がBAM機構の恩恵か空気の流れが潤滑で低域に厚みがあり、音に立体感があります。
これに対して、Heaven VIIは中高音域に澄み渡るような透明感を感じ、どちらかといえば空間表現がバラバラで「定位感が掴めない」印象です。大体のイヤホンは「音場が縦や横に広い、立体的だ」などの常套句で表現ができますが、Heaven VIIは音の鳴っている場所が不均一で「この音はここで鳴るだろう」といった感覚を掴めません。
とはいえ、Heaven VIIIの空間表現も独特でHeaven VIIを多少マイルドにした感じです。最も注目するべき点は、Heaven VIIよりもVIIIの方が上位モデルではなく、両機の個性が差別化されていること。上位モデルの方が高性能……というのは、どの製品でも通説ではありながらも、その前提を完全に覆してくる稀有な兄弟モデルです。
音について
途中でチラホラと触れてきましたが、いよいよ「音」について触れていきます。あくまでもレビューではなく、紹介なため「音の評価」よりも「音について語る」前提で読んでください。
Heaven VIIIは、音数の多い曲よりもクラシックや落ち着いた歌ものを聴いた方が本領を発揮します。特にアコースティックやオルガン楽曲を聴いた時に鳴る「艶やかな音」は格別です。かといえ、低音がスカスカといったこともなく、どっしりとした深みがあり物足りなさも感じません。
空間表現は少々独特で、初めて聴くと「なんだこれ?」と思うかもしれませんが、10分ほど聞き続けると耳が慣れてきます。先述の通り、兄弟機のHeaven VIIとも共通で、両機とも耳を慣らすための下準備が必要です。言葉では形容しがたい定位感と音場表現はHeavenの名にふさわしく、まさに「天国」そのもので何時間でも聴いていられます。
というのも、Heaven VIIIは聴き疲れないように設計されており、数時間ぶっ続けで音楽を聴いても疲れず、もうずっと聴いていたいと思わされます。決してオールラウンダーではありませんが、Heaven VIIIでしか得られない体験があるのは確かです。
ただし、Heaven VIIIの音を堪能するためには「イヤホンを耳の奥に差し込みすぎないこと」がポイント。耳の形状は人によるので、かなり感覚的な話になってくるのですが「耳の入口でイヤホンを支えるイメージ」です。耳道の圧が高すぎると、左右バランスが崩れるだけでなく抜けの悪い音になってしまいます。適当な楽曲を流しながら調整を進めた後に聴き始めるのがマストです。この儀式は絶対に怠ってはいけません。
再生機器はスマホで十分
意外なことに、再生機器は近年のDAPよりもスマートフォンに直接接続した方が「いい感じ」です。
考えられる理由として、当時のDAP(AK240やAK300)は近年のDAPよりも低出力かつ、今ほどDAPも浸透しておらず「スマホのイヤホンジャックに直挿し」が主流でした。そういった市場背景から、出力の低い機器で使う前提の設計だったように感じます。もっとも、明確な理由は開発者のみ知ると思われるので、色々と考察しても答えはわかりません。まあでも、それも含めてオーディオの醍醐味ですからね。
ちなみに、ポタアン等の出力が高い機器に接続すると、ヘッドホンに近い臨場感を味わえます。スマホで聴く「優しい音」とは別物で、パンチの強い音がなります。
天国を体現したようなイヤホン
以上、Heaven VIIIの紹介でした。筆者の人生で「同じものを何度も買う」ことは、せいぜい2~3個程度なのですが、Heaven VII/VIIIは何度も購入してしまう妖力があります。かなり人や環境を選ぶピーキーさ、そして入手難易度がネック。解像感も決して高いわけではなく、初試聴であれば「しけた音だなぁ」とギャップを受けるかもしれません。それでも繰り返し購入してしまう天国を体現した蠱惑的なイヤホンです。
参考情報
本記事に記載された内容は記事公開時点のものであり、必ずしも最新の情報とは限りません。記事をご覧いただく際には、最新の情報を確認するようお願いいたします。
















