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Leica M10 レビュー:約1年メインカメラと使用してみて、写真撮影体験を考え直させられる

Leica M10を約1年間使用しました。オートフォーカス・デジタルファインダー・手ブレ補正機能といった、現代のフラグシップモデルには当然搭載されている機能がないカメラです。よくいえばクラシカルなスタイル、悪くいえば偏屈でしょうか。レビューします。

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楽しいから、Leica M10を選んだ

Leica M10を購入した理由、それは撮影が楽しいから。M型ライカが初登場した1954年にはオートフォーカスや自動露光、手ブレ補正、デジタルファインダーなどの便利な機能はありませんでした。ISOやシャッタースピードのオートに対応したりと、中身は進化しても、当時のクラシカルな撮影体験が今も変わらず楽しめるようになってます。あえて不便を楽しむカメラです。

画像:Leica M8

筆者はLeica M10を購入する前は2006年発売のLeica M8を使っていました。2006年発売のカメラだと、どうしても性能に限界があります。それを解消するためにLeica M10を購入したのも理由の1つです。まあ、正直これは大した理由ではありません。だって、どっちで撮るのも楽しいのだから。

M型ライカは基本的にレンジファインダーと呼ばれる機構を採用しています。ファインダーは「ただの窓」で一眼レフのように「どこがどうボケているか」がわかりません。

ファインダー内に表示される白枠は「写る範囲」で、レンズの画角に応じて表示範囲が変わります。

中心にうっすらとある四角い枠は二重像と呼ばれ、ファインダーと二重像がピッタリ重なると「ピントが合っている状態」です。M型ライカにオートフォーカス機能はなく、手動でフォーカス(ピント)を合わせる必要があります。

フィルム時代のM型Leicaにより近づいたデザイン

Leica M10は本体の厚みが38.5mmと、現行のフィルムカメラボディ、Leica MP 0.72の厚み(38mm)と比較しても遜色ありません。それだけでなく、トップカバーの厚みがLeica M4と同じになりました。実際に使ってみても、フィルムのM型ライカと同じくらい薄いなあ…と感じます。

トップカバー上部にISOダイヤルが搭載されたのもポイントです。これは、フィルム機の「Leica M3」にある巻き戻しノブを彷彿とさせる機構。よりクラシカルなスタイルに近い感覚で使えるようになりました。

フィルム機の薄さに近づいたことが理由なのか定かではありませんが、Leica M10の派生モデル「Leica M10-R」には、名機と評される「Leica M3」や「Leica M2」の光沢感あふれるブラックペイントモデルに寄せた限定モデルとして、「Leica M10-R ブラックペイント」も販売されていました。また、軍艦部にはライカ社の前身にあたる「Ernst Leitz Wetzlar」の刻印も施され、いずれもファン垂涎のポイントです。(通常はLeica Camera Wetzlar Germany)

機能も最低限

デジタルカメラとしての機能も最低限しかありません。保存形式の変更、ライブビュー、露出補正、測光方法…。そういうカメラです。多くを求めてはいけません。

一応、オート撮影モードも搭載されています。とはいっても、ボティ・レンズ共にオートフォーカスには対応しておらず、自分でピントを合わせなければいけません。

本体右のサムホイールには露出調整かライブビューのズームを配置できます。サムホイールから露出調整できるのは楽です。サムホイールが追加されたのはLeica M Typ240からで、Leica M8,M9などのCCDセンサーを搭載した古いボディには搭載されていませんでした。サムホイールがあると露出調整がだいぶ楽になります。

ライブビューもあり、画面を見ながら撮影できます。フォーカスピーキングもあり、ピントが合っている位置も一目瞭然。ライブビューはLeica M10の先代モデル、Leica M Typ240から搭載され、これにより二重像が動かないレンズの装着時でも快適に撮影できるようになりました。

いわゆる「二重像と連動しないオールドレンズ」や「現行の寄れるレンズ」を装着した撮影が捗ります。レンジファインダー機は二重像が連動しない場合、ライブビューでの確認が必要です。二重像を確認せずにライブビューで撮影できるのは便利で、M型ライカが正当に進化しているポイント。(接写の問題は後述します)

モノクロームモードもあり、よりクラシカルな撮影体験を味わえます。

作例

写真機について講釈を垂れるよりも作例の方が気になる人が大半でしょう。以下、Leica M10で撮影した作例です。

Leica M10 APO-LANTHAR ASPH. 50/2 ZM

Leica M10 APO-LANTHAR ASPH. 50/2 VM

Leica M10 APO-LANTHAR 50/2 ZM

Leica M10 Rodenstock Retina-Heligon 50/2 L39改

Leica M10 Summilux 50/1.4 ASPH. Ⅰ

Leica M10 Planar T* 50/2 ZM

Leica M10 C Sonnar T* 50/1.5 ZM

Leica M10 Rodenstock Retina-Heligon 50/2 L39改 Monochrome ON

Leica M10 Planar 50/2 ZM Monochrome ON

クラシカルならではの不便な点も

Leica M10には不便な点もあります。当然、それを受け入れて選んだのですから、不満を垂れるつもりはありません。というのも、レンジファインダーの機構上、接写が苦手です。Kern Aarau Macro Switarなどのマクロレンズで撮影する場合はライブビューに頼らざるを得ません。これはM型ライカの弱点であり、不便なポイントです。

ただし、不便=不満ではないということを強調しておきます。あらためて強調すると「不便な点を理解して同意の上で購入した」のなら、不満を感じる必要がないからです。

ビューファインダー装着でミラーレス一眼のようにも

別売のビューファインダー(ビゾフレックス)装着でミラーレス一眼のような使い方もできます。ピントがどこに合っているのか?撮影後はどうなるのか?を背面液晶のライブビューよりもシビアに確認できるため、マクロレンズや望遠レンズの撮影がより快適になります。とはいったものの、筆者は数回試用した程度です。数回の試用でも、撮影体験の幅を広げてくれる便利なアクセサリーだと思いました。

『Leica Photos』アプリでスマホと接続

『Leica Photos』アプリを使いスマホと連携すると、撮影した写真データを転送したり、カメラの設定を変更できます。遠隔でシャッターも切れます。

正直、Leica Photosから写真を転送するよりもSDカードから直接カードリーダーなりで転送したほうが速いです。筆者はカードリーダーを忘れた時の非常用として使っていました。約1年間Leica M10を使用してきて、Leica Photosはあまり使わなかったので「あると便利かな」くらいです。

バッテリーは持つ

デジタルのM型ライカ、とりわけM8やM9はバッテリーが持たないことで定評がありました。筆者自身もM8,M9-Pを使用していましたが、お世辞にはいいとも言えません。M10はライブビューを使わず、レンジファインダーだけの使用で、こまめに電源を消してあげれば1日以上は持ちます。ただし、ライブビューを有効にすると1日も持たないかもしれません。

結局、何が良かったのか?

Leica M10を約1年間使用して、他社のカメラでは味わえない撮影体験が強みだと思いました。正直、フルサイズセンサー搭載でコンパクトなカメラは他社から発売されていますし、オートフォーカス非対応なM型ライカをあえて選ぶ理由は…正直に言うとないです。

しかし、M型ライカはデジタルレンジファインダーカメラであるため、他のカメラでは味わえない撮影体験を楽しめます。ブライトフレームで撮影範囲を確認しながら二重像を合わせて撮る。先述の通り、レンジファインダーは「ただのガラス」です。背面ディスプレイを確認するまでは撮影結果がわかりません。

つまり、Leica M10はフィルムカメラのようなデジタルカメラと言えばいいでしょうか。

Leica M10はマグネシウム合金、トップカバーとベースプレートは無垢の真鍮を削り出しから製造されており、本体が小型な割に660gも重量があります。本体を手に取った時のズッシリとくる感触は「高級品」を持っているようです。この質感はM型ライカならでは。他のカメラでは感じられません。

Leica M10を購入して1年。不便なカメラではあるものの、質感、そしてマニュアルで撮影する楽しさは他のカメラには変えられません。オートフォーカスなど、他のカメラにあるような便利なカメラなくても、この楽しさは唯一無二だと思います。

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