1MORE(1MORE INTERNATIONAL LIMITED)さんから、新発売の1MORE AEROをレビュー用に提供していただきました。見た目は一般的なBluetoothイヤホンですが、単体でのヘッドトラッキング機能を搭載し、空間オーディオの再生ができるイヤホンです。
通常価格は16,990円で、発売記念セールとして商品ページに3,000円の割引クーポンがあります。(実質13,990円)
クーポン期間:2022年10月25日~11月18日
目次(見たいところからチェック!)
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1MORE AEROのスペック
型番 | ES903 |
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接続方式 | Bluetooth 5.2 |
サイズ | イヤホン本体:39.42 × 20.33 × 24.36 mm 充電ケース:61.99 × 56.40 × 25.5 mm |
対応コーデック | SBC, AAC |
対応プロファイル | HFP, A2DP, AVRCP |
バッテリー容量 | イヤホン片方:40mAh 充電ケースバッテリー容量:450mAh |
最大再生時間(ノイキャンON時) | 約5時間(イヤホンのみ)約20時間(充電ケース併用) |
最大再生時間(ノイキャンOFF時) | 約7時間(イヤホンのみ)約28時間(充電ケース併用) |
防水性能 | IPX5 |
重量 | 約4.9g(イヤホン片側)、約45.2g(充電ケースのみ)、約55.1g(充電ケース+両イヤホン) |
カラー | ブラック、ホワイト |
パッケージと内容物
パッケージは、1MORE EVOに似たザラザラとした質感の紙でできています。硬く、一見紙とは思えないくらいしっかりしていて、なかなか高級感があります。
内容品一覧です。イヤホン本体(ケースの中)、充電ケース、USB Standard-A to Type-Cケーブル、イヤーピース(4サイズ)が入っていました。イヤーピースとケーブルはビニール袋に入っています。
イヤホン本体と充電ケース
イヤホン本体
イヤホン本体です。ステムが伸びているタイプの形をしています。外側に1MOREのロゴがあります。
内側には、装着検知機能用のセンサーなどがあります。
充電ケース
充電ケースはこんな感じ。
落としたりはしていないのですが、素材がプラスチッキーで、気づかないうちに擦れてテカリが出やすいです。
充電ケースはUSB Type-Cケーブル(C to Cも確認)での充電に加え、Qiでのワイヤレス充電にも対応しています。
Android端末と接続して使う
専用アプリで管理
1MORE MUSIC-
制作:1MORE Shen Zhen Acoustic Technology Co., Ltd.価格: 無料
1MORE製品には1MORE Musicという専用アプリがあり、AndroidならPlayストア、iOSならApp Storeでダウンロードできます。
ペアリングは他のBluetoothイヤホン・ヘッドホンと同じ標準的なものです。
まずは端末の設定からBluetoothの設定画面を開きます。本製品の電源ボタンを2秒長押しすればペアリングモードに入るので、出てくる1MORE Aeroをタップして接続を許可します。接続されればペアリングは終了で、次回からは電源を入れるだけで自動的に接続されます。
アプリトップ画面です。アクティブノイズキャンセリングや外音取り込み機能のオンオフ、予め用意されたプリセットから選ぶタイプのイコライザー機能などがあります。
スマートバーンイン(エージング)機能もありますが、詳しい説明は1MORE SonoFlowの記事をご覧ください。今回のレビューでは第2フェーズの途中で評価しています。
この他、マルチポイント接続(実験的な機能)、タッチ操作の割り当て変更、ファームウェアアップデートなどの機能が用意されています。
イヤホンのヘッドトラッキングとは?
イヤホンのヘッドトラッキングとは、すごく簡単に言うと決まった方向から音が聴こえてくるようになる技術です。
もう少し詳しく説明します。普通のイヤホンやヘッドホンでは、自分が向いている方向が変わっても、音楽が聴こえてくる方向は変わりません。耳の真横にスピーカーがあるようなものなので、いつでも自分の顔の向いている方向が「前」になります。
ヘッドトラッキングに対応していると、これが変わります。スピーカーで音楽を聴いているシチュエーションを想像してもらうのが早いですが、普通スピーカーの位置は固定なので、自分の顔の向きが変わると聴こえる方向が変わって感じられますよね。このように、向いている方向によって音の鳴る方向を変化させられるのが、ヘッドトラッキング技術です。
まとめると
- 音が鳴る位置が固定されているのがスピーカー
- どの方向を向いても、今向いている方向が前なのがイヤホン・ヘッドホン
- ヘッドトラッキング技術は、スピーカーのような臨場感を再現するための技術
- ヘッドトラッキング技術を使うと、スピーカーのように、顔の向きによって音の聴こえる方向がリアルタイムに変化する
という感じです。
イヤホンのヘッドトラッキング技術で、現在最も有名なのはAppleの空間オーディオでしょう。AirPods(第3世代)/AirPods Max/AirPods Proなどと、iPhone/iPad/Mac/Apple TVを組み合わせることでのみ使えます。そのため、再生デバイスに依らず、AndroidでもiOSでもイヤホンだけで使えるのは珍しいです。
360 Reality AudioやDolby Atmosとの違い
立体音響技術というカテゴリーでは、似た技術としてSONYの360 Reality Audioや、DolbyのDolby Atmosなどがあります。それらがヘッドトラッキング技術と異なるのは、ヘッドトラッキング非対応のイヤホンでも再生できることです。
360 Reality Audioは、音源ひとつひとつに位置情報を付け球状の空間に配置することで、360°音に囲まれているかのような没入感のある立体的な音場を体感できる技術です。対応音源であれば、頭を動かさなくても音が勝手に移動します。
Dolby Atmosも、360 Reality Audioと同じようなものです。元々映画館向けの音響技術として開発されたため、音源の配置可能位置などに差はありますが、基本的なコンセプトなどは似ています。
どちらの技術も、基本的にはどんなステレオイヤホン・ヘッドホンでも再生ができ、顔の向きが変わっても音の方向は変わりません。ここがヘッドトラッキング技術との大きな違いになっています。
360 Reality Audioなどと、ヘッドトラッキング技術を両方同時に使うこともできます。
1MORE AEROのヘッドトラッキング動作
1MORE AEROのヘッドトラッキングは、音を再生したときの顔の向きが自動的に前に設定されます。再生を止めて再び再生すると、前がその時の向きで再設定されます。
再生中であっても、再生開始時に設定された向きとは違う方向を10秒以上向き続けると、そちらが前として再設定されます。
調べたところ、10秒以上違う方向を向けば前が再設定されるのはAirPodsなどと同様の動作のようです(参考)。
使ってみた感想――音質、ノイキャン性能など
装着感
ステムが伸びているタイプの本製品。カナル型ですがそれほど圧迫感は感じられず、良好な装着感です。
音質
音質は、一言で言うなら中低音が強めの味付けです。AAC接続までの対応なので、音の解像度などは相応のクオリティになりますが、特に音質にこだわる方でなければ音質としては十分だと思います。
アプリのイコライザーで音の傾向もある程度変えられるので、割とフラットな音色にすることも一応できます。
ANC性能
アクティブノイズキャンセリング(ANC)の性能は、公称値で最大-42dBです。この数値は以前レビューした1MORE EVOと同じです。実際私も病院の待合室で試してみましたが、数値通り1MORE EVOと同じくらい結構強力に効いていました。大抵の方は十分満足できるレベルだと思います。
バッテリー持ち
AAC接続で空間オーディオをONにし、アクティブノイズキャンセリングや外音取り込みはOFFにして使ったところ、およそ4時間30分で右側のイヤホンのバッテリーが0%になりました。極端に悪いわけではありませんが、空間オーディオを使うと、バッテリー持ちはあまりよくありません。
空間オーディオ(ヘッドトラッキング)
ヘッドトラッキング技術は、なかなか興味深い技術です。はっきり音の方向が分かるので、音だけでもなんとなく立体感があります。1MORE AEROは、どうやら左右の旋回のみで、上下の向きには対応していないようでした(私が感じられなかっただけかもしれませんが…)。
面白い技術ではあるのですが、一般的な音質の良し悪しの評価軸で語れるわけではないという点には注意が必要です。
音に方向という情報が付加されているというのは、解像度の高さや表現力のような、よく音響機器を評価する際に使われるものさしとは異なります。これから空間オーディオが広く普及すれば、空間オーディオが音質の要素の1つに含まれる可能性もありますが、現状のいわゆる音質とは違う軸です。そのため、高音質を期待して使うものではないと思います。
こういった理由もあり、音楽よりも、映画などの動画コンテンツのほうが相性が良いと思います。私はAmazon Music Unlimited HDが使えるので、360 Reality Audioに対応した楽曲を、ヘッドトラッキングも使って楽曲を視聴してみたのですが、正直音楽だと微妙な感じでした。ライブ音源なども視聴したのですが、実際のライブのような体感かというとそこまでではなく(効果が無いわけではない)…。個人的には、普通の音楽の場合は、空間オーディオよりも、音の解像度や表現力といった基本的な音質が高いほうがメリットがあると感じます。
私が特に相性が良いと感じたのは、ASMRです。ASMRでは、バイノーラルマイクを使って録音することで、そもそもヘッドトラッキングに対応していないイヤホンでも立体的に聴こえるように作られていることが多いです。普通はそれだけでもいい感じなのですが、ヘッドトラッキングと組み合わさると、音が出ている(と感じる)位置は変わらないのに、頭を動かすと音の方向が変わっているように感じるので、いつも以上に臨場感を味わえます。
バイノーラルマイクで録音されていない音源をバイノーラル録音っぽく再生することができるため、今ほどASMRが流行る前に普通に録音された音源に、リアルタイムに立体感を付与して再生することができます。
ただ、コンテンツの制作者の意図を汲めるように、制作時に想定された環境で視聴したいと考える方もいるでしょうから、そういった方には適していません(念のため書くと、ヘッドトラッキング(空間オーディオ)はOFFにすることもできます)。
まとめ
再生デバイスによらない、単独でのヘッドトラッキングに対応した1MORE初のイヤホンである1MORE AERO。空間オーディオ自体が、単純な音質を追い求めるものではない点は踏まえる必要がありますが、従来のイヤホンに足りない空間という表現が加えられるのは新しい体験です。
今どきのTWSイヤホンとしての基本機能も充実しており、普通の音源をバイノーラル録音っぽく楽しみたい方に特におすすめです。