カシオのWear OS搭載スマートウォッチ「PRO TREK Smart WSD-F30」の発表/体験イベントに参加してきました。これは「アウトドア アンバサダー」のイベントで、ちょっと場違いかな?とも思ったのですが、参加した価値が充分にあるイベントでした。
WSD-F30は以前トレーニング用のスマートウォッチを検討したときからかなり気になっていたもので、実際にその説明を受けることができたので購入へ一歩前進しました。なお、すでに予約受付中で、発売は2019年1月18日となっています。
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応募者300人、倍率10倍のイベント
イベントはまず開発担当者からの製品説明に始まり、先行モニターとして1ヶ月使用していた人たちからのレポート、日本最大級の登山コミュニティーサイト「YAMAP」の春山慶彦氏のトークショー、そしてテーブルごとでの開発者を交えた交流といった形でした。
このイベントの募集人数は30名でしたが、応募者は約300名で、倍率約10倍だったとのこと。平日の19時から門前仲町という条件だったんですけどね。
5人ずつでテーブルに分かれ、それぞれ2台の「PRO TREK Smart WSD-F30」が自由に触れるようになっていました。(それとは別に展示もされていました。)
小さく、バッテリーもちも良くなったWSD-F30
WSD-F30、というよりそのシリーズである「PRO TREK Smart」の基本価値としていかが挙げられていました。
- 「腕に地図」
- MIL-STD+5気圧防水
- Wear OS by Google
カシオはPro Trekシリーズでもアウトドアウォッチとして実績がありますが、今回の開発コンセプトとしては「デジタルプロトレックとスマートウォッチの融合」というものがあるそうです。
この説明の時点で私はまだ思い違いをしていたのですが、WSD-F30はスマートウォッチのプロトレックではなく、「デジタルプロトレックとスマートウォッチの融合」というように、その2つがどちらもあるような、そんな製品でした。
一回り小型化
WSD-F30は前作のF20から小型化しています。画面上や数値だけではそこまで違いはわからないかもしれませんが、実際に装着して比べてみると一回り違うのが実感できるようです。私はWSD-F20を持っていませんが、持っている人や先行モニターの方々は一様にそう語り、とくに女性にとって見ればF20は「無いね」というほどだったのが「これならアリ」と言わせるくらいです。
新たなモードも加えて改善されたバッテリー
WSD-F30には3つのモードが用意されています。それぞれで使える機能などが異なっており、もちろんバッテリーにも影響します。
エクステンドモード | マルチタイムピースモード | 通常使用 | |
---|---|---|---|
モノクロ 表示 |
◯ | ◯ | ◯ |
カラー 表示 |
◯ | – | ◯ |
GPS 機能 |
◯ | – | ◯ |
Bluetooth 接続 |
– | – | ◯ |
バッテリー ライフ |
3日 | 1ヶ月 | 1.5日 |
このうちマルチタイムピースモードというのは、F20では時計しか表示できなかったものが高度や方角なども表示できるようになりました。そしてエクステンドモードはF30で初めて搭載されたモードで、マルチタイムピースモードで動かしながらGPSやカラー地図などが利用できるモードです。
これらを使うことでバッテリーライフも伸びたということです。
これでバッテリーが伸びたと言っても、通常使用以外ではBluetooth接続は切れてしまうので、スマホの通知を受けたりはできません。それではスマートウォッチではないじゃないか、と思ったところで気づきました。これはそういう製品であって、ほかのスマートウォッチとはそこが違うんだ、と。
この3つのモードはつまり、スマートウォッチでないプロトレックとスマートウォッチを切り替えるようなものです。そしてスマートウォッチの便利機能を一部だけ使うのがエクステンドモードです。決して普通にスマートウォッチを作ろうとしているのではなく、あくまでプロトレックにスマートウォッチの機能を取り込む、「デジタルプロトレックとスマートウォッチの融合」とはこういうことだったのでした。
バンド交換可能、そして有機EL
ディスプレイも有機ELとなり、非常に見やすく省電力にも貢献しています。また、F20では地味に下部分が欠けていたのですが、F30ではちゃんと円全体がディスプレイとなっています。
このほか、WSD-F30ではバンド部分が交換(スライドレバー式)できるようになり、ウェアの上からでも着けやすい長めで伸縮性のあるバンドも別売りされるそうです。
ちなみに最初から付いてるバンドも、従来のものよりも軽くなり、穴もより細かくなったのでフィットさせやすいのだとか。私の場合、実際に付けてみたらそれでもまだ「うーん、この間が欲しい」という状態でしたが。
先行モニターレポート
続いて先行モニターとして1ヶ月ほど試用していた3名の方からのレポートです。その中でもロベルト本郷三丁目さんのものが興味深かったので紹介します。
ロベルト本郷三丁目さんは主にバッテリーに注目してのレポート。実際にF20とF30を両方装着してハイキングやランニングで活用し、その数値をレポートしてくれました。こうしたメーカー側ではない実際の数値レポートはありがたいですね。
このレポートによると、フルに機能を使う通常モードでは明確な差は感じられなかったようですが、新しいエクステンドモードでは大幅に電池消費を抑えられるとのことです。エクステンドモードでは機能は一部制限されてしまいますが、GPSの軌跡を取ることは可能です。実際の山行ではスマホの通知などは(少なくともこれの対象ユーザーにとって)それほど重要ではなく、それよりもバッテリーのほうが重要なので、こういったモードが選べるようになったのは嬉しい限りです。
「YAMAP」の春山慶彦氏のトークショー
次にWSD-F30にも搭載されている「YAMAP」の春山慶彦氏のトークショーでした。ここでは春山氏のYAMAPに込めた思いなどを語ってもらいましたが、その内容は私の山に対する考えとはだいぶ違ったのでなかなか衝撃でした。
(このあと私個人の考えも入って少々長いので面倒な人は飛ばしてください。)
春山氏は昔イヌイットの人たちと過ごしたこともあるそうで、その時にそこの人たちがGPSを充分に活用して狩猟を行っていたことに驚いたそうです。昔からあるものだとか伝統だとかそういうものよりも、安全にできるのならこんな便利なものは使わない手はない、と。そして同じ頃に出始めたスマホの通信+GPSに大きな可能性を感じたとのことでした。
一方、山ではスマートフォンはなるべく使わずに五感で感じて欲しい、時々PRO TREK Smartで地図を確認して「よし合ってるな」と見てもらえればいい、と。ここで若干の違和感というか、先程の「便利なものは使ったほうがいい」と離れてるなと感じました。
私は山には登山ではなくオリエンテーリング競技者としての延長で入るのでこの辺りの感覚がかなり違います。まず春山氏の考えだと道迷いはあくまでイレギュラーなものとして認識しているようです。だからこそ「時々地図を確認して『よし合ってるな』と」というセリフが出てきます。私は道迷いやミスは常にあり得るものとして考えてます。オリエンテーリングでの技術でもあるのですが、常に現在位置は把握しておこうと考えています。だから山行中に地図をしまうというのは考えられません。
そのような背景があるので、山行中に山を五感で楽しむために地図もスマートフォンもしまってほしいというのは、自殺行為を勧めているようにも思えました。遭難防止に役立つと言っているアプリの開発者が言う言葉とは思えませんでした。
ただ、ここでしまうスマートフォンを現実世界のしがらみの比喩だとして、それに自然を充分に楽しみたいということはわかります。また、迷った後でもスマホとGPSがあれば復帰しやすいというのは事実なので、そういう考えで迷っても助かりやすい時代になったのだ、とも考えられます。ただそれはあくまで復帰であり、未然に防げることを拒否するような発言は、やはり違うと感じました。
スマホ(とGPS)に命を救われたことが2回ほどあるという話もありましたが、こういった発言の後では「命の危険があったのに懲りてないのかな?」とも思えました。話自体は面白かったのですが、こうしたちょっとした発言だけでその考えが見えてきて、それだけが今回のイベントで残念なところでした。
道迷いを防ぎ減らすための活動をわずかながら手伝ったこともある身としては、スマホはしまわず、自然を五感で感じるとともに常に安全にも気をつけていただきたいと思います。
PRO TREK Smart WSD-F30
会場にはもともとPRO TREKのファンでWSD-F20も当然持っているという人が大半でした。なのでTwitterやブログ等で語られるのもほとんどがWSD-F20との比較です。私はWSD-F20を持ってませんし、PRO TREK自体も初めて触ったので、そういう視点から少し見ていきます。
実際に腕につけてみると、まぁ確かにゴツいデザインです。アウトドアウォッチっぽいし、それがいいんですけど。
右サイドのボタンは中央のボタンがホームボタンで、上下のボタンはマップを起動したりツールを一発で呼び出せます。スマートウォッチはなかなかタッチでの操作が面倒だったりもするので、目的がハッキリしていれば、こういったボタンがあるのは便利です。
また、このボタンの感触がなかなか独特でした。見た目からカチッとしたものを想像していたのですが、実際にはものすごく柔らかいものを感じました。なかなか面白いです。
充電は左側面にある端子から。使うのは専用ケーブルで、これはWSD-F20と共通だとのこと。WSD-F20ではこれが外れやすいと不評で、別で後に外れにくくするキットが販売されたようです。WSD-F30でも同じキットは使えますが若干形が合わないとのことで、また別途WSD-F30用のものが発売されるそうです。
表示の見やすさについては、室内では見やすかったものの、これが屋外でどうなるかはちょっとまだわからないですね。このあたりは実際に使って確かめてみないと。
WSD-F30オリジナルのウォッチフェイス。これは地図の上に自分が行った場所が六角形で色付けされて、行ったことのある場所が増えるほどに塗りつぶされていくとのことです。私も愛用しているアプリ『マッピング!』と同じようなことができるわけですね。
普通のスマートウォッチの延長上にはない製品
私はこのイベントに対して、スマートウォッチの中での選択肢の一つとしてPRO TREK Smart WSD-F30を捉えていました。ただそれは少し間違っていました。
一般的なスマートウォッチは生活に密着して、スマホの通知を受け取り、生活や運動のログを取ってサポートします。しかしPRO TREK Smart WSD-F30はその使い方を見るに、スマートウォッチとしての機能は(一時的に)きっぱりと捨てても良いのです。山で遊ぶ間はエクステンドモードでスマートウォッチとしての機能を捨てる、この製品の想定ユーザーはそれに疑問をいだきません。24時間スマホの補助として密着する必要はない、と。
普段下界にいるときはスマートウォッチとして活動し、山ではそんなものは切り離してアウトドアウォッチとして活動する。今まではこれを違う時計にして切り替えていたのを同じ時計でできるようにした、それが「PRO TREK Smart WSD-F30」なのだと理解できました。スマートウォッチの1つとしてこれを選択肢に入れるのは危険で、あくまでアウトドアウォッチがスマートウォッチとしても使えると考えたほうが近いと思います。
そういう意味では、かなりユーザーを限定するものですね。向いてる対象が普通のスマートウォッチユーザーとまるで違います。まぁこれを買う人はそれがいいんでしょうけど。
私自身は、トレーニング用の時計をWear OS搭載のものにしようと考えて(その結果TicWatch Sを購入したものの全然走ってない)このWSD-F30も候補に入っていました。でもこれはもっと自分の使い方をよく考えて、どういう利用のしかたをするのか想定をはっきりとしてから買ったほうがいいと考えています。もともとトレーニング用で考えていたので、むしろWSD-F30は「近い」のではないか、と思ってますが…。
価格は6万円、Wear OS搭載のスマートウォッチとしてはそれなりに高価な部類に入ります。とはいえ、まぁスマホ1台分ですね。さて、どうしましょうか…。発売日は2019年1月18日。まだ1ヶ月あるので充分に悩もうと思います。(それまでにもう少しトレーニング習慣つけたい…。)
まとめ
スマホの発表会やブロガーイベントには何度か行ったことがあったのですが、今回のイベントはやはりちょっと違いました。イベントに参加する前後でこんなに考えを改めないといけないと思ったのは初めてです。そういった意味でも、今回は参加して本当に良かったと思いました。
ただ、元々この機種のファン層がある程度ニッチなこともあって、前作を詳しく知っている、持っているのは当たり前というような雰囲気がありました。説明でも多くが前作との違いについてであり、これを使って具体的にどういうことができるのかというのは、いまいちイメージできませんでした。製品によって得られるものではなく、製品の違いだけだった、というような。なんとなく内輪的なものを感じたので(ぼっちはこういうのに過敏)その辺りは気になりました。できれば次回は初心者にも配慮してもらいたいな、と。
色としてはオレンジが好みですが、WSD-F20ユーザーには新色の青が人気のようです。私は買うならいろんなウェアに合わせやすい黒かな、と考えてます。黒×オレンジ、好きなんですけど。
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#アウトドアアンバサダー #プロトレックスマート